発熱・異臭が示す“よくある症状”

• 背面カメラ周辺だけ局所的に高温（触れないほど熱い）
• シャッター起動直後／ズーム操作中に急激な発熱
• 「焦げ臭い・甘い薬品臭・樹脂が焼けるような匂い」
• 撮影時に画面がちらつく／黒画面、フリーズ、再起動
• バッテリー残量は正常でも消費が異常に速い
• 本体を振るとカメラ内部でカラカラ音（OIS固定不良）

「甘い匂い」はポリマー系の被覆が熱で劣化した際に発生することがあります。
焦げ臭はコイル・フレックスケーブルの焼損で出やすい傾向です。

なぜ危険？——基板損傷リスクの正体

1) OIS/AFコイルの焼損

光学手ぶれ補正（OIS）やオートフォーカス（AF）用のコイルが短絡すると、局所発熱→樹脂の焦げ→駆動ICの道連れ故障に発展。焼損が進むとカメラ交換だけでは復旧しないケースがあります。

2) カメラ電源ラインの短絡

カメラモジュールへ供給される 1V8/2V8/AVDD ラインの短絡で、PMICや保護回路が過電流を検知し再起動ループに。繰り返すと電源IC・充電ICまで波及し、データ救出の難易度が上がります。

3) レンズヒーター/補助回路の不具合

一部機種の結露対策ヒーターや温度センサーが不良化すると、常時加熱してバッテリー急減・異臭の原因に。湿気や水没歴のある端末で発生しがちです。

4) 水分・腐食の進行

微細な浸水でカメラ座金下やフレックス端子に緑青（銅錆）が発生。通電のたびに抵抗値が変動し、温度上昇→匂い→ショートの悪循環に陥ります。

やってはいけない対処

• 無理に冷却（保冷剤・冷凍庫）は結露を招き二次被害
• 焦げ臭のまま充電し続ける（過電流で更に発熱）
• カメラレンズ部を押し込む／叩く（OISユニット破損）
• 市販スプレーでの接点復活（樹脂溶解・残渣で導通不良）
• 分解動画を見ての自己分解（フレックス断線・防水喪失）

到着前にできるセルフ診断（安全優先）

1. 即座に電源をオフ（長押し→スライド）。できなければ強制再起動で停止。
2. ケース・リングなど放熱を妨げるアクセを外し、風通しの良い場所へ。
3. 焦げ臭や甘い臭いが継続するか、1〜2分おきに確認（再通電はしない）。
4. 端末が冷めたら、必要であれば電源オフのまま来店。
   データが不安なら、短時間だけ起動→iCloud/Googleに写真を退避して再オフ。
5. 水濡れの心当たりがあれば、SIMトレイを開けて水分チェック（無理に乾燥させない）。

においが強くなる・発煙の兆候がある場合は、可燃物から離して保管し、すぐにご相談ください。

修理の流れ・費用目安・所要時間

診断の流れ

• 外観・熱源位置の特定（サーモ/非接触温度計）
• 消費電流プロファイル計測・カメラ切離で切り分け
• フレックス／コネクタ洗浄・腐食除去
• 必要に応じて背面カメラ交換テスト（互換機での仮当て）
• 短絡が残る場合は基板レベル修理（電源ライン復旧・IC周辺）

費用・時間の目安

機種・症状により異なりますが、概算は以下を目安にご相談ください。

• 背面カメラ交換：¥9,800〜¥29,800 / 60〜120分
• コネクタ洗浄・軽度腐食除去：¥4,400〜 / 30〜60分
• 基板レベル修理（電源ライン/IC周辺）：¥19,800〜¥49,800 / お預かり

データは基本そのままの対応を心がけますが、重度の短絡では安全確保を優先し、状況によりバックアップのご提案を行います。

再発防止のコツ

• 撮影時の高温環境（直射日光・車内）を避ける
• マグネットホルダーはOISへ磁気干渉——使用位置を工夫
• 防水機種でも湯気・ミストは腐食の原因に
• ケースは放熱性を考慮（厚手＋金属プレートの長時間使用に注意）
• 年1回の防塵クリーニングと点検で早期発見

よくある質問

Q. 臭いが一度だけでした。様子見でも大丈夫？

偶発でも一度でも焦げ臭が出たなら点検推奨。樹脂焼損や微短絡が進行している可能性があります。

Q. カメラを使わなければ発熱しません。放置しても？

未使用でも電源投入時に通電される回路があり、待機中に劣化が進むケースも。早期診断が安全です。

Q. データだけ救出したい

短時間の起動でバックアップ→再オフの運用をご案内します。重症例は当店でデータ優先の安全起動をサポートします。