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ご相談内容と初期症状
秋葉原店にお持ち込みいただいた端末は、雨天での使用後に濡れ、その後も充電はできるが、画面が真っ白/色が反転/線が出るといった表示異常が発生していました。通知音やバイブ、着信は反応があるため、CPUや電源系は生きている可能性が高い状態です。
・電源OFF/充電器から外す
・SIMトレイを開けて風通しを確保
・ドライヤーの温風は不可(結露を招く)
なぜ「充電できるのに表示だけ」壊れるの?
水濡れでは、回路全体が均等に壊れるわけではありません。液体が滞留しやすい低い位置や、微弱信号が走るコネクタ付近から腐食が進みます。表示不良に直結するのは次の領域です。
- ディスプレイコネクタ周辺:緑青(りょくしょう)腐食でピンが絶縁/短絡し、白画面や縞模様に。
- バックライト回路:電流が不足し、極端に暗い/チカチカ点滅。
- 映像信号ライン(MIPI等):高周波ラインの腐食で色反転・ノイズ。
- センサー系(水没フラグ/近接/環境光):誤作動で画面がすぐ暗転。
一方で充電が生きているのは、充電IC〜バッテリー管理回路が無事で、さらには基板のメイン電源が立ち上がっていることを示唆します。この「部分的な生存」が、表示だけが壊れる現象の理由です。
分解診断〜腐食ポイントの特定
当店ではまず、外装を分解してシールドを外し、顕微鏡でコネクタおよび周辺のパッド/抵抗/コンデンサを観察します。腐食は目視で分かることが多く、特にディスプレイ/タッチ/近接センサーの各コネクタは要チェックです。
| 確認ポイント | 主な症状 | 一次対処 |
|---|---|---|
| 表示コネクタの緑青/錆 | 白画面・色むら・縦線 | 洗浄/ピン整形/再半田 |
| バックライトラインの腐食 | 極端に暗い・点滅 | ライン修復/IC周り洗浄 |
| センサー基板の濡れ | 暗転/誤作動 | 洗浄/モジュール交換 |
| バッテリーコネクタ周り | 再起動ループ | 洗浄/接点処置 |
腐食が軽度なら洗浄で改善しますが、パッド剥離やパターン断線がある場合は、補修や部品交換を併用します。
基板洗浄(超音波/IPA)の実際
水濡れ端末は、乾燥だけでは電解腐食の残渣が回路間に残り、再発の原因になります。そこで、以下の手順で処置します。
- 腐食部位の前処理:フラックスで酸化物を浮かせ、機械的クリーニングで大きな錆を除去。
- 基板単体化:バッテリー・スピーカー等を外し、基板のみを安全に取り出す。
- 超音波洗浄(専用液):短時間で粒子化した汚れを除去。
- IPA(高純度イソプロピルアルコール)でリンス:導電性の残渣を洗い流す。
- 低温乾燥&再検鏡:水分を完全除去し、パッド浮きや断線の有無を確認。
なお、Face ID/指紋ユニットは原則洗浄不可です。生体認証はデリケートなため、必要に応じてユニット交換やロジック側の復旧を検討します。
洗浄後の検証とピンポイント補修
洗浄後は、仮の正常パネルを接続して起動テストを行い、表示系・タッチ・センサー・充電を個別に検証します。改善しない場合は次の補修を実施します。
- 表示コネクタのピン曲がり矯正/再半田
- バックライトラインのパターン補修/ダイオード交換
- 腐食部位のジャンパー施工(必要最小限)
- コネクタ自体の交換(部品在庫により即日可)
今回の実例では、表示コネクタ周辺の腐食除去+ピン再半田で正常表示に回復。ユーザーデータもそのままでお返しできました。
所要時間・費用目安
腐食の範囲や機種により上下しますが、簡易洗浄〜点検で60〜120分、補修や部品交換が必要な場合はさらにお時間を頂くことがあります。費用は診断+基板洗浄の基本料に、必要に応じてコネクタ交換/ジャンパー施工/表示パネル交換が加算されます。詳しいお見積りは現物確認のうえご案内します。
やりがちなNG対応
- 電源が入るからと充電を繰り返す:腐食進行で致命傷に。
- 米びつ/乾燥剤に長期放置:塩分やミネラルは残り、再発リスクを孕みます。
- ドライヤーの温風:結露→さらなる腐食。低温乾燥が原則。
- 自己分解:パネル/ケーブル破損で費用増に繋がることがあります。
「電源は入るけど表示だけおかしい」— データをあきらめる前に、まずは状態チェックから。秋葉原駅徒歩10秒、即日診断で最適な復旧プランをご提案します。
店舗情報・ご予約(リペアフォース秋葉原店)
まとめ:表示異常=即パネル交換ではありません
水濡れ後の「表示だけおかしい」は、表示コネクタやバックライト回路の腐食が原因であることが多く、基板洗浄+ピンポイント補修で回復する例が少なくありません。通電を控えて早めに診断へ。データ最優先で復旧を進めましょう。